第五章【安国と政治】(3)創価学会員と選挙運動

「もし、公明党が伸びたら、日本の国は創価学会に乗っ取られる。断じて阻止しよう」
国政選挙が近づくとこんな内容の話がチラホラと出てきます。また、
「学会員が増えたら、日本の国は池田会長に牛耳られる。独裁政治になる」
などという話まで出ます。
「一宗教団体によって、国を勝手に動かされる」
と危機感をあおって反学会、反公明党の流れを広げようとします。

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こういうキャンペーンの中には、重大な錯誤があることを知らなければならないでしょう。それは民主主義の根本にかかわる問題です。
例えばもし、学会員が増えて公明党が第一党になり、その中から総理大臣が誕生したとします。
そして、公明党の政策を中心にした政治が行われたとします。

これを「一宗教団体によって、国を勝手に動かされる」と考えるのは奇怪なことです。
選挙によって公明党が第一党になったということは当然、国民の大勢が公明党を支持していることを意味しています。多数決によって選ばれた政党が、自党の政策を推進するのは民意に支えられたものであることは言うまでもありません。それに対して非難をするのは民主主義を否定することにほかなりません。
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不思議なことは、第一党が自民党の場合は独裁などとは全く言わないのに、公明党が伸びるとすぐに独裁政治などと大騒ぎをすることです。公明党に対するある種の偏見があることは間違いありません。

学会員が国民の過半数を超えたとしたら、学会員が望むような政策を実施するのが民主主義の当然でしょう。それを、学会員を優遇する偏頗(へんぱ)な政治だというのは、学会員に対する偏見に基づくものにほかなりません。実に当たり前なことが、公明党に関しては異常な状態のようなイメージにしてしまうのです。
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創価学会が、「貧乏人と病人の集まり」と蔑視された時期が草創のころにはありました。それは学会批判者が意図的にマスコミに流したイメージ作りでもありましたが、現実としてもその傾向はありました。

現在では芸能やスポーツの世界、産業界や商業分野で活躍をしている有名な学会員も多くいます。年始には東京の学会本部に限らず地方の本部にも大手企業から多数の挨拶回りが来ています。

また、選挙になれば、良し悪しは別として、学会関連の仕事をしている多くの企業に対して公明党支援の要請もできる状況になっています。
それにもかかわらず、新聞記事などに時々、
「公明党支持者である創価学会員には低所得者が多く、福祉対策に力を入れる必然性がある」
などと書いたりしているものがあります。
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新聞社に、
「何を根拠に、創価学会員には低所得者が多いと判断しているのか。学会員に対して所得を調査するアンケートでも取ったのか」
と追及すると、
「申し訳ありません。創価学会員に対して所得の調査などはしていませんでした。ただ、一部の公明党支持者の所得についてはアンケートしたことがあり、それに基づいて、公明党支持者イコール創価学会員と判断して書いたものでした。担当記者には注意します」
という返答が帰ってきました。
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もともと、「学会員に対して所得を調査する」などということができる訳がありません。学会員か、学会員でないか、の判断は主観的なものもあり、統計的に明確にもなるものではありません。
学会員の数に入っている人だったとしても、学会員の意識のない人もいることは、現場にいる活動家なら誰でもよく知っていることです。

「貧乏人と病人の集まり」というのは実際には創価学会の誇りなのです。貧乏人と病人という苦悩している人々に目を向けないような団体や宗教は偽物です。
学会は人生の不条理に悩み苦しんでいる人に希望が持て、また現実生活の中にその実証を得ることができるようにするために信仰を勧めてきたのです。
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そして、学会の信仰は、単に自分だけの生活が良くなればよいというものではなく、社会を良くすることまで活動の範囲を広げています。それは、生活苦の中に沈んで選挙や政治などに目を向ける余裕もない人々に政治意識を持たせ、積極的に選挙にかかわるような変革をもたらしました。

自分たちの社会は、自分たちが選んだ政治家によって住みよい地域にしてもらうことが、公明党の設立により現実のものとすることができました。学会員は地域や国を良くするという使命感に燃えて、喜んで選挙運動に取り組でいます。
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一時期の批評として、
「創価学会は、政治に無関心な人々に政治意識を高めさせ、投票行動に結びつかせた。結果、投票率を上げる働きをなしてきた」
と評価する評論家がいたこともあります。これは明確な事実です。

マスコミになどでは投票率が上がることを良いことのように報道します。しかし、時々の選挙の状況や特定の政党にとっては投票率が上がると不利になることがあるので、低くなるように望んでいるところもあります。
もちろん、浮動票に期待できるような政党は、投票率が上がることを期待します。各政党も口では、投票率が上がって有権者の政治意識が高まることを喜ぶようなことを言っていますが、内心はそんな単純なものではありません。
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いわゆる五十五年体制が確立してから長期間、自由民主党の安定政権が続きました。その間における選挙は、固定客ともいえる自民支持層と、労働組合を基盤にした野党支持層の票がうまく住み分けされていたといえます。
こういう時期には与党も野党も、投票率が上がって無党派層がバランスを崩すような投票行動をすることを望みませんでした。マンネリ化です。

選挙をしても一向に政界地図は変わらないから、有権者にとっては政治が手の届かないところの出来事のように感じられます。どこに投票しようが体制は変わらない、という諦めのような気持ちから投票に行く意味が感じられなくなってくるのです。
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ましてや、組合もない中小企業で日々、経済的に苦しい生活の中で必死に働いている人々にすれば、選挙などどうでもよいことであったといえます。
こういう状況の中で公明党は設立されました。

創価学会が取り組んだ、最初の国政選挙は昭和三十一年の参議院選挙でした。公明党という名称はまだ発表されていなかったので、無所属で立候補しています。
創価学会が国政選挙に候補者を立てるということが分かった時、世の中の大方の見方は、
「どうせ、新興宗教のいつものことで、誇大宣伝の信者数をもとに、誇大妄想の国会議員の誕生を空想しているのだろうが、実際には一人も当選しないだろう」
というものでした。
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これは正当な見方といえます。新興宗教が誇大宣伝をして、自分の教団が巨大なものであることを世の中に知らせようとするのは常套手段です。
そして選挙にでもなれば膨大な票を集めることができるような大風呂敷を広げます。ところが、実際に開票してみるとわずかな得票しかできないのが常です。このことは世の中の人は皆知っていて、新興宗教は大ボラ吹きだと思っています。

創価学会に対してもほとんど皆、この様な見方をしていました。だから、昭和三十一年に当時の選挙制度で、全国区そして地方区として東京と大阪の二つの地域から立候補したが、ほとんどの予想はだれも当選しないだろうというものでした。
その中で、学会員は選挙運動などはしたことはなかったが、信仰活動を根本に選挙の支援活動を行いました。
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選挙の結果は大方の予想に反して、大阪選挙区と全国区二名が当選しました。これには世間が驚きました。特に大阪選挙区は三人区で、有力な既成政党の候補者がおり、無所属で立候補した学会推薦の候補者が当選するなどとはマスコミをはじめ、誰も夢想だにしていませんでした。

いかに予想外であったかを表すものとして、当時の某新聞の選挙結果を報道した見出しには、
「まさかが実現」
と大きな字で書かれていました。この結果は、創価学会は他の宗教団体と違って、誇大妄想の誇大宣伝をする教団ではないことを世間に知らしめました。
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利害関係のあるところからすれば、
「創価学会は普通の宗教団体とは違って、現実の社会の中に影響力を持つところだ。特に政界にまで力を持ってくるとなると、これまでの対応を考え直さなければならない」
という段階になっていきました。特に既成政党は危機感を増していったのです。

この大阪選挙区の選挙運動を指揮したのは後の池田会長でした。だから池田会長は、創価学会が本格的な政治活動に参加することができることを内外に証明したといえます。
定数が三名という選挙区において当選を果たしたということは、学会がさらに発展すれば、全国のいたるところで議員が誕生する可能性を示唆したといえます。
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会員は、この選挙の結果を見て、国政選挙に参加するなどということは、口にはしていたが現実にできるとは思っていなかっただけに、会員の力を結集すれば日本の国の政治を動かすこともできるのだという自信を持つことができました。

この昭和三十一年の参議院選挙が基盤となって、やがて公明政治連盟が作られそして、公明党の設立へと向かったのです。池田会長が学会の政治への参入を現実のものにしたのです。
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この選挙以降、学会は国政選挙に積極的に立候補者を立て当選させるという流れが出来あがりました。会員も選挙運動に慣れてきて、習熟することになります。

学会が政治への影響力を持ってくると、陰に陽に様々な個人や団体から学会批判が激しくなってきました。それは宗教的な正邪ではなくして、利権に絡んだものがほとんどを占めました。
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当然ながら学会員は、選挙があると公明党の支援活動である選挙運動に力を入れることになります。本来、選挙運動というのは有権者の政治意識が高まり、他人にも働きかけようとする積極的な政治参加の表れです。
そして、働き掛けられた側も政治への意識が高まるという歓迎すべき活動です。それは、選挙に対して無関心な人たちよりも、社会に対して強い責任感を持った人たちであるといえます。

ところが、学会員が選挙運動をすると、評価は全く逆になります。事実の確認もできていない、悪意に満ちた批判がマスコミなどを通じて多く流されるようになりました。
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「投票に行く気のない人に頼んで会員が身代わりなって投票した」とか、「公明党が候補者を立てていないところの会員が、立候補しているところへ大量に住民票を移動している」とか、「認知症や知的障害者の人を無理やり投票所に連れ出して投票をさせた」など、さまざまな、あり得そうな嘘を並び立ててもっともらしく報道されました。

この様な報道は一時期、選挙があるたびに流されたので、そこで作り上げられたイメージは既成事実のような認識となりました。現在でも、ある年齢層の中には事実だと思い込んでいる人がいまだにたくさんいるのが現状です。
会員の選挙運動に対する非難キャンペーンとしてはかなりの成功をおさめたといえます。
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会員の選挙運動に対する批判の内容を考察すると、そこに重大な問題が隠されていることが分かります。それは、学会員が選挙運動することは悪であり、世の中を良くするためには阻止しなければならない、そして学会員には選挙運動する権利がない、という差別的な意図が見え隠れしているということです。

本来、有権者には当然認められている、選挙運動ができるという権利を学会員にだけは認めないようにしようというものです。
創価学会員の政治活動の分野にも、創価学会に対する差別意識の一端が出ることになったのです。
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「宗教団体が政治を動かすのは憲法違反であり、創価学会員が選挙運動するのは政教一致の違法行為である」
などということを公言する、反学会の評論家も出てきたりしました。
公明党の発展を阻止するためには、学会員の選挙運動の足を止めることが最も効果的であることは他党には十分に分かっていることでした。

公明党との政治的な論争によって評価を決するのではなくて、支持母体を攻撃することによって公明党をたたきつぶそうとしたのです。明らかに異常な側面を持つ、選挙運動への妨害です。
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選挙になれば、既成仏教の教団や新興宗教の教団も特定の候補者の推薦もするし、支援の選挙運動もします。ところがいまだかつて、これらの教団の選挙運動を憲法違反だとか政教一致だなどと批判されているのを聞いたことがありません。

教団が特定の政党や候補者を支援し、その選挙運動をするのは自由な権利です。批判する方が権利侵害に当たるのは当然です。
学会以外の教団については良識的な対応をするのに、学会に関しては人権感覚が疑われるような批判を堂々とするのです。
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考えてみれば、労働組合を支持母体にした政党の場合、その政党が気に食わないからといって、労働組合を攻撃するでしょうか。そんなことがあるわけがありません。

政治の世界であれば政治の世界の中で論争をするのが当たり前のことです。それが、公明党をつぶすために、宗教の正邪とは無関係に学会を徹底して攻撃するというのは、異常としか言いようがありません。
これこそ政教一致による宗教弾圧といえるでしょう。大げさな言い方をすると思われるかもしれないが、実際の選挙の中では当然のように行われてきたのが実態です。
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学会員はすべてボランティアで公明党の支援活動をします。どこの政党の運動員よりも全体的に熱意が感じられます。それは各政党の支援者と腹を割って話せば、学会員の候補者への思いが並外れて強いことが理解できます。また、講演会などに参加し、その雰囲気を比べれば違いが分かります。

学会員と他党の運動員との違いは端的に言えば、学会員の選挙運動は自らの人生をかけたものであるのに対して、他党の人は、たいていは趣味や娯楽程度のものが多数でしょう。
公明党の候補者が落選するということは、支援した会員にとっては、人生が一歩後退したと捉えるのに対して、他党の支援者は負けたとしても自己とは直接関係のない敗北ととらえるでしょう。
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もちろん、他党の支援者も立候補者とさまざまな利害関係にあり、勝敗を我が身のこととして感じる人はいるでしょうが、公明党の支援者からすればほんのわずかでしかありません。

他党の候補者がしみじみと、
「公明党の候補者がうらやましい」
と正直な気持ちを漏らす気持ちが分かります。それだけ学会員は公明党を支援することによって、社会の繁栄と平和を実現しようと人生をかけて活動をしているわけです。
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時々、素朴な疑問として、
「公明党の、平常の政党支持率は全くよくないのに、どうしてこれだけ多くの議員が当選するのか。支持率から計算すれば、はるかに少ない当選人数しか出ないはずだ」
と問いかける人がいます。その答えは、会員の公明党の候補者に対する一念の深さにあるといえます。
公明党は創価学会員の熱誠によってここまで発展と安定をしてきた政党なのです。